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贈与税を払うのはばかばかしい!!・・・って本当?

こんにちは、不動産部の平です。

私は、不動産の売買部門を担当していますので、「買い」のお手伝いをするだけでなく、当然ですが、「売り」のご相談も受けます。この「売り」のご相談を受けるときに、よく聞かれるのが相続、或いは相続税の問題に絡んだ贈与の問題です。この土地を売りたいが、本当に売ったほうが良いのか? また土地を売ったお金を贈与すべきか、土地のまま贈与すべきなのか?自分では結論が出ないという人から、こんな聞かれ方をします。例えば

 

「わしの年から言って、10年か15年すれば、わしもあっちへ行くやろうけんど、息子たちにはこのままのかたちで残しておくのが良いんか、売って金で残しておくのが良いんか、迷うとんよ」

とか

「いずれ、息子の家を建てようと思うて持っとった土地やけんど、もう息子も県外に家を持ってしもうて、もう帰ってけ~へん、売って金を息子にやろう思うとんよ。」

とか、言われたり、

「ただ、金をそのままあげたら贈与税っ云うえろう高い税金払わにゃならんのやろう?土地のまんまあげたほうが良いんかいな?」

とかも聞かれます。

 

これらの質問は、父母として或いは祖父母として子や孫を思う気持ちから来ていますので、もっともだと思う疑問です。しかし、こんな疑問に即答するのは難しいのです。相続を考える上で、息子さんに(娘さんに)自分が持っているものを元気なうちに挙げる、つまり贈与することの是非を、その土地(或いは建物)だけについてお聞きしただけでは、答えは出せません。じゃ、どうすれば・・・・となるんですが、以前にも書いたことですが、相続の事を考える場合は、その方の持つすべての財産(不動産、預貯金、債券・株などの金融商品そして、支払いをしているローンなどの借金、保証人になっている債務など)をすべて棚卸して、且つそれをだれにどう分けるかというところまで、話を進めた上でないと、一つ一つの財産についてどうすればよいか?という結論は出せないんですね。

 

ただ、明らかに相続税の基礎控除額を超えるような資産をお持ちの方が、少しでも残される家族、つまり相続人たちが払う相続税を減らしてやろうと思って、お元気な内に財産を家族に渡しておこうというのは、相続対策としては有効な場合が多い。ただやり方を間違うと逆効果になる場合もあります。

ここでは間違ったやり方を一つ一つ挙げるのは紙面に限りがあるので、書けませんが、ここで一つ、強調しておきたいのは、「贈与税は高い、なるべく払わないで済むように考えねばならない」という固定観念を持っている方が多く、「年間110万円という無税の枠でしか贈与するべきでない。」と思い込んでいる方も非常に多いという事です。これは間違った思い込みです。この考えは今すぐに変えたほうが良いと思います。

飽くまで、相続税を相続人が払わねばならないという財産を持っている方に限っての話ですが、それも財産が多ければ多いほど、贈与税は相続税より安いのです。

以下、それを検証してみましょう。数字が出てきますが、単純な計算なので、流れの通り見ていただければ、どなたでもわかると思います。

まずは、贈与税の税率を出しておきます。      <国税庁タックスアンサーNo4408から作成>

贈与税率

 

 

 

 

 

 

例を挙げて仮に計算してみましょう。

おじいちゃんが今年、長男の娘(27歳)と息子(25歳)、つまり孫の2人に500万ずつ、お金を贈与したとしましょう。贈与税は幾らでしょうか?

年間110万までは無税ですから、まずは500万から110万を引きます。

500万-110万=390万

おじいちゃんから成人した孫への贈与ですから、特例税率が使えます。特例税率=15%

390万×15% -10万円=48.5万

孫である長男も長女もそれぞれ、来年の2/1~3/15の間に、贈与税の申告をして48.5万円を納付せねばなりません。

 

 

因みに、相続税の税率はどうかというと、下記に表を掲げています。

相続税率

 

仮にこのおじいさんがもともと持っていた財産の総額が1億円だったとしましょう。そして財産の増減がないまま5年後に亡くなったとします。妻と長男と長女の3人が相続人だとします。このおじいさんの相続による家族が払う相続税を計算してみましょう。

 

<孫への総額1000万円の贈与がなかった場合>

・基礎控除額=3000万+600万×3人=4800万(相続税の基礎控除額=3000万+600万×相続人数)

・課税資産額=1億円-4800万=5200万

法定相続通りに相続した時の税金は   妻1/2 長男1/4 長女1/4の相続として

妻 =5200万×1/2=2600万×15%-50万=340万

長男=5200万×1/4=1300万×15%-50万=145万

長女=5200万×1/4=1300万×15%-50万=145万  税額合計=630万

◎実際のそれぞれの相続人の納税額は、実際にこの資産をどう分けたかにより変わりますし、妻の納税額は、このケースならばどんな配分になろうと無税になります。

※相続税の計算は大まかにいうと、残された相続財産から基礎控除額を引き課税される財産額を出します。それを法定通りの割合で相続した時の相続人それぞれの税金を出して合計すれば、その相続での相続税が出てきます。実際の相続人一人一人の税金は、その相続人が相続した財産の割合を、計算した合計の税額にかけて計算します。ですから、相続税の比較をするときは、とりあえず法定相続割合で計算して合計した税額を見ればいいことになります。

 

 

 

<孫への贈与をしていた場合>

・基礎控除額=3000万+600万×30日=4800万

・課税資産額=(1億円-1000万)-4800万=4200万

法定相続通りに相続した時の税金は、   妻1/2 長男1/4 長女1/4の相続として

妻 =4200万×1/2=2100万×15%-50万=265万

長男=4200万×1/4=1050万×15%-50万=107.5万

長女=4200万×1/4=1050万×15%-50万=107.5万  税額合計=480万

※これも実際の相続税の支払いは、具体的にどう分けたかによりますから、その点は省略します。

とりあえず、法定割合の分割で支払う税の総額で比べてみましょう。

 

贈与した場合と贈与しなかった場合の差は630万-480万=150万です。

贈与税の方は、長男、長女合わせて97万円ですから53万円節税できたことになりますね。

この例から見ても、贈与は110万までに抑えないと高い税金を払うことになるからやめたほうが良いという考えは取らないほうが良いことがわかりますよね。

ただし、被相続人が残す財産が、「3000万円+600万円×相続人数」の枠の中に明らかに収まり、相続税の支払いがないという人は、110万以内に収めるべきですね。

 

子供たちと関係が良くないという方は意外に多いのですが、お孫さんはみなかわいいらしく、お孫さんに生前贈与をしたいという祖父・祖母の方は多いです。

こういう時の贈与において、やってはいけないことを3つだけ記しておきます。

  • 孫の2人とも若いから、無駄使いされてはいけないと思い、実際に現金は渡さずに、長男、長女の通帳をつくり500万ずつ入金したものの、孫たちには渡さずに、おじいちゃんが二つの通帳を持っていた。

⇒名義預金として、贈与の合計1000万はおじいさんの相続財産とされます。

 

  • 孫たちでなく子供たちに贈与した。しかしそれから3年たたないうちに、おじいちゃんが亡くなり相続が発生した。

⇒相続発生よりさかのぼる3年間の相続人への贈与は相続財産として持ち戻され(3年内加算)、贈与はなかったものとして相続財産を計算されます。子供だけでなく奥さんへの贈与も同じです。(お孫さんは相続人ではありませんが、子供や奥さんは相続人です。相続人への相続直前3年間の贈与は意味がなくなります)

 

  • 自分が亡くなった時に孫たちがもらえるように、現金でなく生命保険をかけ、孫の2人をそれぞれ500万ずつ受け取れるようにした。

⇒生命保険の非課税枠の適用(500万×3人=1500万)がなく、相続税も2割加算となり、絶対にやるべきではない。しかもこれをやると上記の3年内加算の対象にもなってしまう。

 

以上です。相続対策に関しては、様々な情報が飛び交い、嘘であっても信じられてることまでがあります。きちんと、ご自分の資産把握をした上で、専門家に相談しましょう。

 

上級相続支援コンサルタント 不動産部 平忠彰