自分で書く遺言は書きやすく、保管の不安もなくなったものの・・・

皆さま、ご無沙汰をしておりました。不動産部の平です。

体調の所為にしてはいけないのですが、やや体調が悪い状態が続いていて、仕事の合間に文章を書く余裕がなくなっていたため、2か月以上、このブログ更新ができていませんでした。9月に大学病院で手術することも決まり、原因と対処がはっきりしたことで、やっと一連の不安が少し小さくなり、ブログを書く余裕が気持ちの中に生まれたので、PCに向かっております。1月にここで書いたブログで、自分で書く遺言「自筆証書遺言」が一部手書きでなくてもよくなり、且つ法務局が保管してくれるようになったので、作り易くなりましたという事を書きましたが、その事とも関連して今日は、相続に関するある制度が新しくなり、施行される日でもあるので、そのことを書いてみようと思ってます。

 

さて、本当に早いもので、今日から7月。今年は統計的に非常に遅い梅雨入りで、まだ梅雨に入って間もないですが、いきなり梅雨本番に入ったかのように、雨の日が続いています。

この天候では雲の動きが気になるところですが、その下で動いている人の動きも気になるこの頃ですね。大阪のG20への出席に続き、北朝鮮の金正恩委員長との電撃会談、イランとの一触即発の対立など、相変わらず、経済的な損得しか考えない厄介な超大国の大統領の動きは気になるところで、その言動に世界中が振り回されている気がしています。

 

そんな天候や、世界の大きな流れを横目で眺めつつも、私たちは日々の仕事や生活の中で動くしかありません。私の不動産の仕事も、自社分譲地の売買はもちろん、ぽつりぽつりと、売りや買いのお話を受けて、個人の土地の販売や、土地探しのお手伝いをする事を繰り返しています。そして来店されるお客様の不安や疑問もそれぞれ、似たことの繰り返しが続いています。

 

先日、県外のお客様から販売を依頼された、やや広めの市内の古い家が建った土地を、販売につなげることができました。実はこの土地・家に関しては、売主さんの状況が複雑な物件でした。この売主さんは先に母親を亡くされ、次いで父親が亡くなってしまった為、両親が住んでいたこの土地・家を相続したという50代の被相続人の長男である男性でした。この男性の父親はこの家に愛着を持っていたようで、その思いで長男に次いでもらいたいと遺言に残していたそうです。でも自分は県外に住み、既にそこで家を持ち生活の基盤も築いておられたので、徳島に帰ってこの土地・家を当面利用することはありません。そこで少しリフォームしたうえで借家として貸しておられました。ところがその相続から半年後に、この売主さんは、弟から裁判を起こすと伝えられたそうです。

 

父親の残した財産というのは、自宅として使っていたこの120坪ほどの土地とそこに立つ家、それから300万少々の預貯金だけだったそうですが、父親は先に書いたように、この土地・家を次の代にも残していってほしいという希望を持っていて、ぜひ長男に継いでもらい、ずっと持ち続けてほしいと、家庭裁判所で検認してもらった自筆の遺言書に書いていたそうです。次男は結婚はしているものの、転職を繰り返し、借家暮らしでたびたび親に無心しては、落ち着かない暮らしをしていたそうです。相続は遺言があればそれを第一優先にして財産分けをしますから、息子2人は父親の四十九日が明けてすぐに、この家・土地は兄が相続し、葬儀費用などを支払って残った預貯金の150万円くらいを弟がもらって、その時は弟も何も言わずに、相続は片付いたように見えたという事です。

 

しかし、半年後、弟を代理する弁護士からいきなり内容証明郵便が送られてきて、兄が両親の自宅と土地をすべて相続することは弟の遺留分を侵害していることになるから、弟の遺留分の割合で登記をし直せと、遺留分減殺請求という内容だったそうです。「一緒におやじの遺言書を読んでいたのに、何をいまさら・・・」と腹が立って、しばらくほっといたらしいのですが、その後、共有物分割のための裁判まで起こされそうになったので、取敢えず弁護士を通じて話し合いました。父親の意向を組めば、弟と共有のかたちででも、この家を持ち続ける方が、その意に沿う事にはなるが、自分に対して裁判迄起こしてお金を要求する弟の状況から見て、一緒に共有するというのは、この先何かと問題が起こりそうなので、いっそのこと売却してその代金を分け、すっきりと片付ける方が気持ちも楽になるからと、私の方に売却依頼をされたわけです。

 

亡くなった方の遺産を相続権のある人達で分ける時に、往々にして話し合いがうまくいかず、様々な問題で、話し合いがこじれ、相続が争族になってしまうというのは非常によくある話です。そして、その心配を抱えて、税理士や司法書士などの専門家に相談される方も多いのですが、そこで多く言われることは、「遺言書があれば、その通りに分けることになるから、家族・親族が揉めないように遺言書を書いておきましょう」・・・というものです。

遺言書2

これはこれで正しいアドバイスですが、この相談をするときに、資産の棚卸をした上で、なおかつその遺言書の内容まで相談しないと、上に書いたような問題が起きてしまいます。せっかく揉めないように書いた遺言書の内容が、非常に偏った財産分けになっていた場合、このような遺留分の侵害という問題を引き起こしてしまいます。揉めないようにと思って書いた遺言書が逆に揉める原因となってしまうのです。専門家に相談する場合は、資産の棚卸をして、その分け方の希望を伝え、遺言書の内容まで相談をする必要があります。遺言の書き方や保管の仕方だけを聞いて、その内容については相談せず、安易に自分の希望だけで偏った分け方をする遺言書を書いてしまうと、その遺言書そのものが争族を引き起こす原因となってしまうのです。

 

「遺留分」というのは民法で決められた、相続人が、残された遺産から最低限分けてもらえる権利の割合です。「遺留分」として決められた分は、被相続人の意思とは関係なくもらえる権利があるのです。この権利を侵害するような財産の分け方を遺言書に書いてしまうと、その権利を侵害された相続人が、自分は少なくともこれだけはもらえる権利があるのだから足りない分を分けてくれと「遺留分減殺請求」という訴えを他の相続人に対して、起こされてしまうのです。

 

この例でいうと、この家の評価額は、大きい家ですが築後30年が経過していて、100万ほど、土地は路線価で20万円/坪するところなので、20万×120坪=2400万の評価額。預貯金は300万円。合計すると遺産の総額は2800万円です。相続人は兄・弟の兄弟2人だけなので、単純に計算して兄弟で1/2ずつの相続ですので1400万ずつとなりますが、相続税の基礎控除(3000万+600万×2=4200万)内の資産額なので、相続税はかかりません。

 

遺留分というのは、この法定相続分の半分なので、弟の遺留分は1400万/2=700万という事になります。預貯金の150万を弟はもらってはいますが、遺留分の金額からするとあと550万円分は遺産として受け取る権利があるという事になります。遺留分減殺請求をした時点で、この両親の自宅と土地の2600万円分の評価の内550万円分は弟の権利が設定されることになり、兄弟の共有物となります。

兄弟が仲が良い状態であれば、不動産を共有してもさほど問題は起こりませんが、裁判などという状態では、仲良く共有していくことは難しいでしょう。これは、この売主さんの判断通り、売却してそのお金から遺留分の分を弟に分ける方が、すっきりとすると私も思います。

幸い広めの土地を探している買主が見つかりましたので、早期に売却することができました。

 

 

◎2019.7.1以降の相続から  遺留分減殺請求➡遺留分侵害額請求

ところで、この遺留分減殺請求の制度が今日から変わるのです。2019年7月1日から現物の減殺ではなく、侵害した分だけの金銭の請求権という事になったのです。昨日までの制度であれば、今回のケースのような遺留分減殺請求を起こされた場合、残された家・土地を遺留分の分の権利だけ、弟の権利を登記して共有登記をすることになるのですが、本日から、この減殺請求は金銭のみの請求権に変わったのです。物件の請求ができなくなりました。

遺留分を侵害している金額の分だけ、お金で払ってくれという請求権に変わったのです。だから、この請求をされても残された資産の共有登記はしなくてもよくなったわけです。何かと問題が多い不動産の共有はしなくてもよくなったという事です。但し、金銭の請求をされた際に、支払う金銭が都合できない場合、裁判所に申し出て、支払いの延期を認めてもらう事は可能です。

 

相続対策として遺言書を書こうとしている方、亡くなった後せっかくの遺言書が争族の原因とならないように、ぜひ専門家にその内容まで伝えた上でご相談ください。

 

株式会社セイコーハウジング 不動産部 平 忠彰(日管協 上級相続支援コンサルタント)