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相続法改正 父親の葬儀が終わっての兄と弟の会話

兄:「お疲れさん!」

 

弟:「あぁ、兄貴こそ、お疲れ!喪主は大変だったな。」

 

兄:「あぁ、急だったから、慌てたよ。」

 

弟:「先週、病院で話したときは、すごい顔色もよくて、元気だったんだがなぁ。だから、中央病院から連絡があった時は、最初は冗談か?と思ったくらいだ。」

 

兄:「別府にいる洋子に電話した時も、『冗談じゃないわよね。本当の話よね』って何度も聞き返されたよ。まぁ、ともあれ、立派に送ってあげられて、一安心だ。ここまでやれば、おやじも安心して三途の川を今頃渡ってるよ。」

 

弟:「そうだな。言っちゃ悪いが、あんな立派な霊柩車、おやじにはもったいないくらいだったよ。思った以上に、列席者も多かったし、いい葬式だった。」

 

兄:「ところですぐ帰るのか?」

 

弟:「あぁ、ゆっくりしたいが、仕事があるから、明日の昼には岡山に帰っていないと。なんだ?、なんかあるのか?」

 

兄:「いや、ちょっと相談をしとかんといかんなと思ってさぁ。」

 

弟:「相談?なんの?」

 

兄:「おやじの相続の事さ。」

 

弟:「えぇ、葬儀が終わったばかりだろ。もう相続の話をするのか?早すぎるだろ、四十九日が終わった頃でいいだろう。おやじの家は、このまま兄貴たちが住めばいいんだから。おやじも時々そう言ってたじゃないか」

 

兄:「あぁ、それはそうさせてもらうけど・・・いや、お前だから言うんだが、今俺の家の家計は大変な時期なんだぁ。長男の優斗がこの4月から東京の私大へ入っただろう。次男の博斗は高校へ入った。知ってるとは思うが、東京の私学に行かせるのは大変な金がかかるんだ。高校の方も何かと費用がかかる。だから、手持ちの金をほとんど使い切った状態なんだ。」「たちまち、この葬儀の支払いができる余力が今はないんだよ。」

 

弟:「あ、葬儀代の相談か?その事なら、おやじの預金があるだろう。退職した後、兄貴と一緒に7~8年暮らしてから、病院に入ったけど、兄貴は、『俺が一緒に暮らしていて、一番世話になってるから、俺が面倒見る、おやじの金は使わせない!』って言ってたじゃないか。実際は兄貴というより、義姉さんの百合さんが病気をしてからの3年間ずっと面倒見てくれたんだよな。 そのうえ、唯一のおやじの財産の北矢三のマンションの事だって、管理を任せた会社とのやり取りはすべて由利さんがしていたよな。その賃貸収支の管理だって、由利さんが全部やってくれてた、『古いマンションって、いろいろと出費があるのよー』って俺にもこぼしてたから、俺も知ってるが、でもちゃんと家賃収入はあったはずだよな。その金使ちゃったのか?」

 

兄:「いやいや、おやじの退職金と併せたら、3000万以上にはなっているはずだ」

 

弟:「だったら、それで払えばいいじゃないかぁ。」

 

兄:「あぁ、そうしたいんだが、そう簡単にいかないんだ。」

「病気はしててもおやじは頭はしっかりしてた。病院へ支払いがあるときは、百合にカードを渡して、貯金から引き出してもらってたよ。だけどさ。亡くなったら、それはできないんだよ。おやじの預金はもう凍結されているはずだ。」

「銀行から引き出すには、俺とお前と洋子の3人の相続人全員の承諾書がいるし、この3人が間違いなく相続人だと証明するために、おやじの生れてから死ぬまでの戸籍を全部取り寄せないといけない。おやじは台湾からの引揚者だから、引き揚げ後この徳島に落ち着くまで、あちこちと本籍を変えてるんだ。その県外の戸籍を全部取り寄せねばならない。かなり時間のかかる作業だよ。そのあと、預金についてもきちんと分け方を決めなければならない。だから、すぐにはおやじの預金は下せないことになる。」

 

弟:「へぇ~、兄貴も役所勤めとはいえ、教育行政のほうだからか?相続法の改正の情報は知らないんだなぁ。今度、相続法が改正されるんだよ。施行日はまだだが、施行日前に発生した相続でも、銀行の窓口で被相続人の口座からの仮払いができるようになったはずだ。一人の相続人の仮払いは金額に上限があるはずだが、おやじの預金のある銀行に聞いてみてくれよ。どうしても無理なら、いくらか俺から都合するから連絡くれ!」

 

兄:「え、本当か?それゃ、たすかる!ちょっと背伸びした葬儀をしたから、香典ではだいぶ支払いに足りないと心配してたんだ。」

「ちょっと安心したところで、もう一つお前に話しておきたい。これは洋子と一緒に3人でまた話し合わなきゃいけないことだ。おやじは3年間入院したり退院したりだった。俺が自分で言うのも気が引けるが、その間、女房の百合がずっとおやじについて、本当によく世話をしてくれた。それにお前が言うように、おやじの持ってたマンションの管理の仕事は全部百合が引き受けてくれていた。以前話をした304号室の、あのひどい入居者を管理会社と協力して追い出してくれたのも百合だ。おかげで俺は自分の仕事に専念できて、ほんとに助かった。この3年間、言ったように、おやじの金は病院の支払い以外は全く使っていない、療養に掛かる費用は全部俺か、百合の財布から出ている。マンションの大家の仕事も任せていたのだから、それも考え併せて、相続の遺産の中から、いくらか百合に振り分けてほしいんだ。」

 

弟:「いやいや、兄貴もかなり熱が入ってるねぇ。その事なら、俺もよくわかってるよ。俺も百合さんは本当によくやってくれたと思ってる。財産をいくらか分けてあげて当然だと思うよ。

それに、これも今度の相続法の改正に盛り込まれていることなんだが、被相続人に対して、報酬を得ずに、看護などの労務を提供し、且つ被相続人の財産の維持増加に貢献をした相続人以外の人から、相続人に対して金銭の要求ができるという事がはっきりと謳われたんだ。由利さんも遺産分与の請求しても一向にかまわないから、由利さんに、いくらくらいほしいか聞いておいてくれよ。洋子には俺からちゃんと話をしておくから、その金額が出たら、ゆっくりと話し合おう。」

 

兄:「いやぁそうかぁ、持つべきものは弟だな。お前が不動産の仕事をしていて、相続の情報にも詳しいのは、本当に頼りになるよ。ありがとな!」

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