yuigonsyurui

相続の事で、この日曜日(13日)から変わったことがあります。

年が明けて早、3週間が過ぎようとしています。もうすっかり正月気分は抜けて、仕事に追われております。

このブログを読んでいただいている方は覚えていらっしゃるでしょうが、年末年始に、家族が集まる機会は、もし自分が認知症になった時や、そうでなくても相続について話し合うのに、良い機会ですよという事を書いて年の終わりの挨拶とさせて頂きました。

 

そんなことを書いたのも作年末に、父親の住んでいた家を売却したいというご相談で来社されたお客様との話が頭に残っていたからです。そのお客様に「お父様は亡くなったんですか?」と聞くと「いや元気です」とおっしゃる。「ん?」と疑問に感じて、よくよく話を聞いてみるとお父様は認知症になられて、施設に入られたそうです。医師の診断をきちんと受けられたようですから、その上での認知症であれば、息子さんがお父様の土地を売ることはできません。家裁への後見開始の審判の申し立てが必要なことや、その後見制度の説明などをしたところ、「そんなにめんどいんですか?売るかどうか、もう一度よく考えてみます」とおっしゃって肩を落として帰って行かれました。

お父様ご本人には酷な言い方ですが、残される家族の視点で考えれば、不動産に関しては親が亡くなって相続の種々の手続きをするより、認知症になる方が、よほど大きな負担をかけることになるかもしれません。

 

このことを考えてみても、少なくとも60代になった方、或いはなろうとしてる方は、元気なうちに自分が亡くなった後の事や、もし認知症になったらという事を真剣に考えておくべきですね。70代、80代になると思考力や判断力が鈍ってきますから、たとえ元気であっても、専門家からの教えを理解できず、正しい対策を打つことが難しくなる可能性があります。仕事を現役でやってる年齢の内はまだまだ思考力や想像力も衰えてはいないはずだし、専門家の力を借りることができれば、ベストな答えを探すことは必ずできるでしょう。

 

さて、1月13日は日曜だったんですが、この日から40年ぶりに改正が決まった新しい相続法の一部が施行されました。「自筆証書遺言」の方法の一部が変わったんです。

 

いきなり「自筆証書遺言」と言っても、なんだそれは?と思う方もいるでしょうから、説明が必要ですよね。

 

相続の発生は、多くは予期せぬ形で起こります。人間いつ死んでしまうかは誰もわかりませんから、これは当然と言えば当然です。私の場合も、父の死は突然でした。それまで数回は軽い心臓の病で入退院をしておりましたが、まだ72歳でしたので、「もしものこと」は、頭にありませんでした。知らせが来たのは、前職の外食産業に従事していた時で、それも年間で最も忙しいお盆の時期でした。職場だった店に、夕方突然母親から電話があり、父親の危篤を知りました。すぐに家に帰り、高松から瀬戸大橋を渡って、車で夜中ずっとスピードオーバーのまま九州まで走り続け、明け方には熊本の病院に着きましたが、もう言葉を交わせる状態ではありませんでした。

 

こんな風に親の死は突然やってくるもので、本人はもちろん、残される側も何の準備もしていないことが多いわけです。しかし、いざ相続が発生すると、たくさんの事をやらざるを得ないようになります。葬儀の手配は、葬儀屋さんを決めて連絡するだけで、いろいろなことをやってくれるので、気付いたら終わっていた・・・というのが正直な感じかもしれません。しかし問題はその後の事です。残された家族での遺産分けが非常に大変なのです。私の場合は、一人残される母親の事だけを考え、母親が相続するもの以外では形見分けくらいしかなかったので、すべて兄夫婦に任せ、何の争いも起きることなく、相続は終了しました。

 

しかし、私が仕事上でお話を聞く、売却のご相談を受けたお客様の中には、非常に揉めてしまった方もたくさんいらっしゃいます。現在販売委託を受けている土地の一つは、相続人4人での話し合いが揉めてしまい、高松の高等裁判所まで行ってやっと分配の仕方が決着したという土地です。売却したお金を裁判所で結審した割合で分ける換価分割、という遺産分割の方法を取ることになっています。

 

突然発生した相続の後に、財産の分配をめぐって相続人が話し合う時、遺言書があれば、もめてしまう可能性はかなり低くなるのですが、きちんと遺言書を準備している人は非常に少ないです。相続人たち、家族での遺産分割協議はほとんどの場合スムーズには進みません。その多くが紛糾し、中には家裁の審判、更に高裁へと揉め方がエスカレートしていきます。

「うちは、財産は本当に少ないから、揉めることもないわ」と高をくくっている家族ほど揉めます。

それこそ、「おやじの財産なんて住んでた家だけだ」というような場合にこそ揉め易いのです。残った母親と長男と長女の3人かいたとしたら、一軒の家・土地をどう分けるかなんて答えの出しようがないんですから。結局、唯一の財産だったその家・土地を売却してそのお金を分けることで決着したのはいいが、母親の住む家が無くなったというような事になったり、仲の良かった兄弟や姉妹の関係が悪くなったり、となってしまいます。

売却の相談を受けるお客様の中には、私が見る限り、家族崩壊していると言えるような人たちもいます。

そんな相続による悲劇を防げるのが、遺言書というわけですが、その内容の要点や、書き方まで詳しく書いていると、紙面がまたものすごく長いものになってしまうので、今日は、1月13日から変わったという、自筆証書遺言の事だけをなるべく簡易に書いておきます。

 

その前に、知識として知っていてほしいのですが、対策として効果が大きいとされる遺言にも、その仕方がいくつかあります。下記の3つの遺言です。(災害や事故時などの特別方式の遺言はここでは省きます)

 

 1、自筆証書遺言

 2、公正証書遺言

 3、秘密証書遺言

 

の3つです。

このうち、1、の自筆証書遺言の規定が40年ぶりに変わったのです。

まずこの3つの遺言の違いを挙げておきますので、確認してください。下記の表でその違いが判ります。当社が属する団体「日本賃貸住宅管理協会」の中で、相続支援コンサルタントの養成講座を開いて頂いている「福岡相続サポートセンター」がまとめている表です。この表でよく違いを確認してください。

遺言の方式

 

 

このうち、自筆証書遺言の規定がやや緩和されました。その主な内容は2点です。

Ⅰ、作成方法の緩和

作成方法としては、必ず全文、自筆で書くというのが条件だったのですが、内容のうち、財産目録の部分だけを自筆でなくともよいという事になりました。

 

所有する土地がいくつもある、アパートを数棟持ってる、金融資産として、有価証券や株のいくつもの銘柄を持ってる・・・・・というような財産の種類(金額ではない)が多い方はそのすべてを自筆で書きだすとなると、大変だし、誤記する可能性が高くなります。特に70代、80代になった高齢の方が、これを全部手書きで書くとなると数字などの誤記がかなり出ることと思います。しかし間違ってしまうと遺言の効力はなくなってしまいます。

 

だから、この「財産目録の部分は自書する必要はない」となったわけです。目録の代わりに不動産なら登記簿の写しや預金口座なら通帳のコピーでもよくなったわけで、家族にパソコンで作成してもらった一覧表でもいいわけです。但し、全ページに署名と押印が必要ですが。

 

2、保管方法についての新制度

公正証書遺言などと違い、費用も掛からず、証人や立会人もいらないので、すぐにでも自分で書き始められるのが自筆証書遺言の良いところですが、果たして書いたものをどこにしまっておくか?

誰にもわからないところに保管していた場合、本当に誰にも分らずに、遺言があるという事が気付かれないまま、相続人の話し合いにより、相続手続きが全部終わってしまう。という事も有り得るようです。時々、相続が終わってから、数年経って、遺言書が見つかったなどという事も聞きます。見つかったら見つかったで、開封する前に家庭裁判所の検認を受ける必要がありますし、あとで出てきたという事で、その信ぴょう性にも疑問がわくかもしれません。

誰にもわからないところに隠すことはできたとしても、いざ相続が発生したときに遺言書が開けられないまま…となってしまう。ではすぐに人目に付くようなところに置いておいたら・・・・・。

これは誰かが中身を書き換えてしまうかもしれず、その内容を読んだ一人の相続人が自分には不利と思って、この遺言書を捨ててしまう、或いは隠してしまうなんてことが起きないとも限りません。

 

そこで、改正された相続法では、遺言者自身が法務局に自筆証書遺言の原本を持参し、保管申請をすれば、法務局は原本の保管とともに、それを画像情報として保存することとなっています。相続発生後に、その画像情報の証明や、中身の閲覧などの申請を相続人の一人が手続きをすれば、他の相続人に対して、法務局から遺言書を保管している通知をすることになっています。また、法務局が保管してくれるわけですから、家庭裁判所による検認の必要もなくなります。

このように、作成する手間が少しだけ緩和され、問題が多かったその自筆証書遺言の保管方法についてもかなり安心できる制度ができたことで、今まで自筆証書遺言を書くのにためらいがあった方は、すぐにでも書き始めてはいかがでしょうか?

但し、自分で考えて遺言を書く場合、内容によっては残された相続人の間に、争いを起こしてしまったり、自分の思いとはうらはらの結果を生むような内容になりうる可能性もあるので、書く場合はしっかりと専門家に相談の上、争族の種にならぬようしっかりと検討の上、書くようにしましょう。

上級相続支援コンサルタント(日管協)不動産部 平忠彰